※台湾地名等の日本語環境にない文字は★と表示させています。
写1 グランドに現れた地変(光復中学校)l
霧峰は車籠埔断層の中央部分に位置し,堆積層が厚いため2m程の上下残留変位が現れた。上盤側の観覧施設はほとんど無傷である。またこの地変の延長上にある生物学教室では標本ビンがガラス戸棚の中で無事に保管されていて,緩やかに変形が形成されたことを示している。本地点は「断層博物館」として保存されることが決定されている。
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写2 九★二山の山地崩壊
「島原大変,肥後迷惑」で知られる眉山の崩壊では,火山活動によって雲仙の眉山が有明海に崩壊し,対岸の熊本に大津波を襲わせた。ペルー地震では地山の崩壊によって2つの都市が埋没した。
九★二山の山地崩壊はこれらに匹敵する現象で,厚さ100m,幅1km,長さ1kmの岩が約20〜30度の層理面に沿って1kmほど滑り,崩壊土砂は尾根を超えて二つの谷を埋めた。崩壊土砂の挙動は複雑で,中心線近辺は慣性力主体であり,側方ではコヒーレントの高い動きがみられる。崩壊の側方に位置した家屋は1kmほど滑り落ちて居住者3名が無事であった。
一見すれば崩壊面は単純な滑り板状に見えるが,湧き水はなく,板状に滑り出した土塊が次第に空気を巻込み滑落速度を上げていく過程が想像される。また崩壊土砂の一部は側方の丘を主滑り方向とは直角方向に圧し,丘の一部を10m以上も盛上がらせ,地表に生えていた檳榔樹を空中に跳ね飛ばしている。
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写3 九九峰の地滑り
複雑な山塊と急傾斜面にもかかわらず瑞々しい緑(草・灌木)に覆われた美しい山容によって地域信仰の対象となっている九九峰は地滑りによって丸裸になった。火炎山相で構成される。九九峰には地震前には一日に十数名の縦走者があったという。崩壊構成物は低固結の礫岩であり,崩落礫は斜面直下に崖錐状に堆積している。浅い崩壊が広域に斜面全面にわたって連続し,結果的に崩壊面積(植生の破壊域)が極めて広い。
この他にも,大規模な地滑りの差違活動が認められる水頁岩の分布域,崩壊密度が高い香山相分布域,節理や層理面に規制され崩壊規模が大規模となる中新統分布域(九★二山・草嶺)など,地質と地震動の組み合わせで多様な地滑り例が点在している。
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写4 石岡ダム ![]()
大甲渓を横断する取水用の重力式コンクリートダム。地変線は写真左側(右岸)から2番目のゲート下に表れ,左岸側が相対的に10m近く上昇した。米国では重力加速度を超える地震動を受けて崩壊しなかったアースダムによって「不経済といえるほどの安全設計」と批判が集中したことがある。このような地変による崩壊に対して無力であった「耐震設計」の思想が問われている。
写5 ★豊橋 ![]()
石岡ダムと同様に大甲渓に表れた地変によって崩壊した★豊橋は多径間のPCT桁橋である。川中に突如出現した落差8mの滝と崩壊した橋梁の組合せによって現地ではちょっとした観光地になり,ほとんどいつも十数名の人が見物に来ている。
石岡ダム・★豊橋・写5の建造物は断層北端のごく近傍に固まっている。この近辺では断層による地変線は限定された範囲でかなり明確にそして単一に表出する。一方,断層上を南進して到達する霧峰付近では,明確な上下動を示す地変線の周辺に,階段状に上下地変が現れ,地変域は100mを超えており,その様相は一様ではない。
写6 地変線上の建築物 ![]()
竣工後3ヶ月の建築物が取り壊される。地変線から数メートル離れた構造物に致命的な被害はほとんどない。地変がその周囲の運動エネルギーを吸収したかのような現象である。陸羽地震の千屋(せんや)断層では,低角であるが故に地表面が縮小され30年以上の間,土地争いが続いた。その折りに,地盤隆起による傾斜位置では建築物の被害が大きかったけれども,地変部から僅かに離れると被害が激減しており,とても「断層が地震を引き起こした」とは言えない現象として見られた。「断層地震説」が「断層結果説」を説得し得なかった一つの理由でもあった。集集地震ではこの被害特性が多くの人によって指摘されている。1923年の関東地震でも被害規模の大きさに埋没しているが,地変線の近辺では同様の被害傾向が報告されている。今後の地震動モデル化に重要な資料が再確認された。広範囲に緩やかに上下動が発生する「津波地震」が陸上で発生した可能性もある。

写7 地震に弱かった台湾独特の騎樓構造
騎樓とは道路に面した歩道空間をアーケードにした構造形式である。建築計画的には,アーケードに面したファサードを店舗として利用し,上部は住宅として供される。構造的には平面的,立面的に剛性のバランスが悪く,1階のアーケード部分を支える柱に被害が集中した。この柱の損傷が大きい建物では倒壊に至っている。
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写8 1階が潰れた5階建てビル(東勢)
阪神・淡路大震災でも同様の崩壊型が多発した。1階をショウ・ルームとする場合には開口部が多く,『見映え』のいい店舗は耐震性を満たしていないことが多い。この建築物の周辺では煉瓦造りのひ弱な建築物がほとんど無傷であり,このビルの崩壊が特に目を引いた。
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写9 柱主筋の重ね継ぎ手部の破壊
柱主筋の重ね継ぎ手部が一カ所に集中したために,鉄筋間の空きがなく,コンクリートが充分に充填されなかった。このため,破壊がその部分に集中したと考えられる。また,主筋を取り巻く帯筋の端末処理が90度であったことも脆性的な破壊の要因となっている。
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写10 高層集合住宅の倒壊
幹線道路に面した高層の集合住宅の被害である。一部のスパンで1階部分が落階している。施工不良が取り沙汰されているが,構造的な欠陥であるのか現状では判断できない。阪神大震災のときにも,被害にあったマンションの建て替え問題が大きな社会問題となったが,台湾でも同じ問題で住民と施工会社(施工会社がデベロッパーを兼ねている)との間でトラブルが多発している。
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