傾斜機能材の応力解析

機械工学科 教授/西村 哲 助手/三浦 浩一
本研究室では大きく分けて二つの研究を行っており,一つは材料の弾塑性解析,他方は生体力学である。弾塑性解析としては,以下に述べる傾斜機能材の弾性論展開,自動車の衝突エネルギー吸収剤の最適設計,弾塑性振動解析,塑性流動則等。そして,生体力学としてはスピードスケートや砲丸投げの動作解析である。ここでは,上記の傾斜機能材について少しお話する。

●傾斜機能材とは?

 プラズマ焼結法の開発により,金属と非金属の微粒子を混合し,それらを焼結して作られる複合材料が開発されるようになってきた。この二つの成分混合比を任意に変化させることにより,誘電特性,磁気特性,導電性,耐熱性,冷却性,耐摩耗性,耐衝撃性,超塑性,そして剛性も任意に変化させることが出来るようになる。更に,部材内部の場所により混合比を変化させることにより,単一部材内でも場所により異なる性質を持ち合わせることも可能である。従って,これまでにはない,個々の使用目的に適した材料を創出することが可能となってきた。
 例えば,混合する微粒子の濃度を傾斜させることによって,表面は高硬度で基材部は高靱性の両特性を兼ね備えたような材料を作り出すことも可能である。これらは傾斜機能材料(FGMs : Functionally Graded Materials)と呼ばれている。
 しかし,このFGMを開発し実際の構造体に適用するにあたり,どのように性質を変化させれば要求を満たすものとなるか,また,開発されたものがどれだけ要求を満たしているのかなど,現在ではこれらを調べるには実験的な方法しかない。従って,実際にFGMを用いた構造物を設計するにあたり,また,要求に合致するようなFGMを設計するために,剛性を理論的に算出する方法が必要である。
〈例〉傾斜機能材の捩り問題への適用
 FGMを捩り問題へと適用すると,その支配方程式は複雑なものとなる。しかし,既存の理論では応力関数φを用いたが,ここでは歪関数ηを定義し
横弾性係数を歪関数の関数とする条件を与えることで,既存の捩り理論と本質的に同一の支配方程式を得ることが出来るようになった。すなわち,既存の捩り理論で解かれている問題であれば,同じ手法でこのFGMについても解くことが可能である。更に,ここで与えた上記の条件は捩り剛性を変化させる条件であり,従って,強度を目的とした設計に対しては有用な条件となる。また,等価横弾性係数の概念を導入し,捩りモーメントやワーピングの算出を,既存の結果を用いて簡単に得られる事を示した。
〈例〉傾斜機能材の二次元問題への適用
 二次元問題における板の単純引張(軸力P)において,図1のように一方向に縦弾性係数が変化する。
図1 板の単純引張

板の内部の応力状態はどの様であるか?誰しも

であると予想するだろう。しかし,実際はそうではない。縦弾性係数が一様でない場合は,一般の弾性理論式よりも非常に複雑な支配方程式を解かなければならず,簡単には応力状態の厳密解を算出することはできない。この支配方程式を差分近似し,数値計算により算出したものを図2に示した。図は単純引張りを受ける図1の板(縦横とも単位長さ)の,内部の応力状態を示している。縦弾性係数は引張方向に一次で変化するものを仮定している。予想に反し,応力状態は内部で複雑なものとなっている。また,垂直応力だけでなく,剪弾応力までも発生していることがわかる。従って,変形後の形状も単純に引張方向に伸び,その直交方法に縮むのではない。
 では,最後に,この板の変形後の形をあなたは想像できますか?
σxの分布 σyの分布 τxyの分布
図2 応力分布
連 絡 先
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